Tuesday 4 February 2014

発表(つづき)


研究室のメンバーも変わっていた。
あの時にいた先輩達は、誰もいない。
さまざまな研究所で、ご自身の研究をされている。
私も、とっくに卒業したのだが、どうしてか、
まだ今茂木さんと一緒に研究させてもらっている。
研究室の中のいちばんの古株になって。
そして、今度は、私が、このシンポジウムで発表をすることになった。
後輩の石川君と一緒に。
茂木さんや、郡司さん、池上さんという、
あの運命の時に、お話しをされた人達の前で、同じ場所で。

1月20日、21日という日程で、私の発表は21日だった。
茂木さんも、郡司さんも、池上さんも、個人的に本当にあれ以来お世話になっていて、
とくに今更緊張する必要などないような間柄ではあるけれども、
壇に立って、マイクを持って声を出した瞬間に、異常な緊張を自覚した。
声のコントロールがまったくきかず、震えてしまうのである。
言葉が出てこなくなって、焦った。
まったく、その瞬間まで、そこまでの緊張だという自覚がなかったために、
驚いてしまった。
20日の夜には、飲み会で、その日に発表された先生達に向かって、
言葉でかみつきさえしていたのに。
これは、ずるい、こんなはずではなかった、と思いながら、しゃべりつづけた。

私は、今の自分を、そのままに、言って良いということが嬉しかった。
実際にやれたことは、小さいし、びっくりするようなことなんか何もない。
あってもなくても良い研究。
でも、この場所では、自分の関心を、例え笑われるようなことでも、
あまり大事じゃないかもしれなくても、
本当に思っていることだったら、言っても良い。
私にとっては、ここはそういう場所だった。
他の学会では絶対にいえないようなこと。
それが本当に科学なんだということを、私は、私の科学の人生の最初に教えてもらった。後から、後から、自分が感謝の気持ちでいっぱいであることが実感された。
声が先に震えた。彼らの前で、正直に最大限、お話しできたことが嬉しかった。
終わってからは、何時間も、全く人の話が聞こえないくらいで、
まるで、夢の中にいるようだった。ようやく夢から出て、いまここに。

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