Friday 28 July 2023

"THE HISTORY OF EMOTIONS, A Very Short Introduction" by Thomas Dixonの感想

 同じ言葉でも時代により文化により意味が違う。たとえば現代人は「幸せ」になることに必死だけれども、happinessのhapはもともと偶然という意味で「幸せ」は強い感情を意味する言葉ではなかった、また「愛」にはそれを感じたときに特徴的な表情や身体表現がなく、愛は瞬間的というより持続的なものだから実験室では測り難く、愛はそもそも感情なのかというところから議論されるのが面白かった。でも一番面白かったのは、感情表現が自分たちと違う文化の人たちを見て、大声で笑うなど洗練されてなくて子供っぽいだとか、逆にこの民族は表情がないだとかいって、まるで自分らと同等の知性がないかのように扱った歴史があるけれども、弱い立場に置かれた人が、身を守るために無理に笑顔を作ったり、逆に、感情を押し込めて密かな抵抗することはよくあることだと分析されているところだ。日本人も子供っぽいと言われることがあったが、本当に知性がないわけではもちろんなかった。ただ違っただけだ。そして、感情を表さなくなる(inscrutability)、優しさを拒む(refusing to care)、頑なになる(obdurancy)、無関心になる(disinterest)などが、自分の基準を押し付けてくる人に対して身を守るための態度として挙げられていたのだけれども、現代の日本でも高齢者や認知症のある人が「介護拒否」をして困るなどという言い方をしている。まさにそれは私達が、「自分たちこそが普通」だと押し付けているからではないかとはっとした。




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