Sunday, 5 October 2008

無限遠の光源



解析三昧の毎日でマリーナにあわなきゃ死ぬと思った。
横浜トリエンナーレへ。
まっしぐらにマリーナのところへいくと、
不安な出で立ち
タイトル「魂の手術台」("Soul operation table")

この人は。
たった一人、高い台の上で鏡の中の自分と向き合う。
その姿を人に見せるための冷たい鏡も横に用意して。
様々な人の目線をまた、feedbackしながら。
下では自由に人が行き交う。
マリーナが不在の手術台のライトが赤い鏡に映るのをずっとみていた。

マリーナの作品は固定化しない。
マリーナがそこにいなくて、ただ手術台があるだけでも。

マリーナの作品を見ていて
私は現実から逃れるためのファンタジーは要らない。
現実を直視して生きる姿を見たいのだ、と思った。

ファンタジーはどこかナルシスティックで、自己弁護的だ。
本当に心を癒してくれるものは、なにか別のもの、ではなくて、
ど真ん中で、逃げない、自己欺瞞をなくそうとする、
自分の一回限りのいいわけのきかない生の中で、魂の鍛錬をする厳しい人。

このような形で、このような条件に生まれついて、
だからこそ、魂の鍛錬は義務。
神にでも近づくような、魂の鍛錬。

愛している。

6時頃家に向かう道では
すっかりと日が落ちて、
空は曇りのためか、均一で、
どこか無限に遠い光源が
確かにあることを知らせる
セロファンのような透き通る濃紺の空だった。




写真 Marina Abramovic, "Soul operation table, 2008"

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