Friday 6 August 2010

七月のこと

気が付いたら、あっという間の一ヶ月。
毎日、喫茶店に行って、やることをやって、
自分の感情からはできるだけ焦点を外して、
大切なもののことを考える練習をする
という、繰り返しの日々だった。

でも、そんな間に起こった大切な事、いくつか。

山下残という人のパフォーマンスを見に行こう、と友人に誘ってもらった。
事前に、「チケット料金の代わりとして、パフォーマンスと交換しても良いと思う品を持ってきてください」
というような趣旨のことが言われていて、
作品と交換できるものっていったら・・・命をかけるくらいに大切なものでなくてはならないんじゃないか、と思って、
どうしようかと考えたり、
でも自分が作品を作ることがこの先もしあったら、観客に対して強いることはあるだろうか、と考えたりした。
結局、ウィトゲンシュタインの「哲学宗教日記」を買って、その中に一枚、写真を挟んで持って行った。
それまでその人のことも作品のことも、全く知らなかった人に対して、今の私ができる最大限のことだった。
大切なものの交換ってどんなことだろう、とどきどきしながら見に行った。

その帰り道、友人と、議論になった。
作品の見方について。
そのときのせいいっぱいということについて。

その数日後、その友人は私を巣鴨の盆踊りに誘ってくれた。


その盆踊りでは、サラリーマンのおじさんが、安定した腰で、ミニタオルを首の後ろに挟みながら、
何十年と身体に染みついた動作で、軽々と、だけど、今しかない、というように踊っていて、
また、
一人の白い浴衣を着て、赤い帯を締めた少女が、これまた、自分の喜びをかみしめながら、
でも呼びかければすぐにでも、はい、といって笑顔を見せるような感じで、ほんとうにしなやかに踊っていたのが、
なんだか本当に今でも心に残る七月だった。

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