Thursday 6 August 2009

おばあちゃんの涙

高熱が続いて入院していたおばあちゃんが退院したので、
家を訪ねた。

信じられないよう、とおばあちゃんが言う。
自分は70年以上生きてきて、一度も病気をしたことがない。
そんな人がイキナリ病気になるなんてないでしょう?
ただ、熱がでただけなのにさあ、先生が、心臓が悪いなんて言うんだ。
という。

ママが
なにいってるの、病気はいきなりなんだよ
ある日突然そうなっちゃうのよ
というと、

エエ?
あやちゃん、病気が、ある日突然なんてことないでしょう?
そうでしょう?
ほんとうかい?
あやちゃんは博士だから知っているでしょう?

と本当に信じられない真剣な顔でいうので
返答に困って笑っていた。

お昼ご飯のタイミングにいってしまったから
食べていきなよう、食べていってよう、
といって、
おかずや、メロンを出してくれていた。
ご飯を食べ終えて、
メロンをみんなで食べ始めたら、
おばあちゃんのスプーンの使い方が震えている。
あれ?
と思った。
あれ?と思っておばあちゃんをしばらく見ていると
おばあちゃんが口を開いた。

「お父さん(私のおじいちゃんのこと。おばあちゃんはおじいちゃんをこうよぶ)が何度も病気して
入院したりしてきて、私は生まれてから一度も病気をしたことがない丈夫な体だから、
私がお父さんを面倒を見るんだと思ってきた。
なのに、反対になっちゃった
面倒を見ていただくことになっちゃった」

ぼろぼろ涙を流してしゃくりあげながら言った。


心臓の動きが悪くなっているというようなことを
10年も前から近所のかかりつけのお医者さんに言われていたけど、
悪いけど、大丈夫だからね、と言われてきたらしい。
でもこの間、熱が出て、豚インフルエンザかとおもって大病院に行ったら、
点滴をいっぱいされて、1ヶ月も入院して、
疲れているとき、本人にとって弱いところ(すなわち心臓)が菌にやられて熱が出た、というストーリーらしいのに、
できれば手術した方がいいんだけれどなあ、というようなことを
言われて脅かされ続け、退院するときもそういわれた。
だからといって、
お医者さんは入院している間一日に一度見回りにくるということもなかった。
手術の理由はなんでなんだといっても理由がよく分からない。
もう退院してるのに
心臓のことだけに、頭の中が不安でいっぱいになっていて
かかりつけのお医者さんは大丈夫だっていってきたのに、
あの人は手術だなんていうんだ、
とほんとうにくやしそうに言っていた。

弁膜というのは、年をとると動きが悪くなるらしい、
あまり深刻でなければ、何もしなくていいものも多いらしい、
とどこかで聞いたことがある。
なんだか、よくわからないけれど、
腹が立ってきて、おばあちゃんに、
「おばあちゃんが信じたくないものは信じなくて良い
おばあちゃんを10年以上もずっとずっとみてくれてる
おばあちゃんのことをよく知ってくれているお医者さんの方がずっと信用できる。」
といってしまった。

私はそのお医者さんのことを両方とも(かかりつけの人も大きな病院のその人も)知らないから
そんな風に言い切って・・・と不安でいっぱいになったけど、
いわずにはいられなかった。

おばあちゃんが出してくれたメロンのスプーンは、
スイカの種の模様がついて先が三つに割れている、銀の、
私が子供の時いつもつかっていたスプーンだった。
全部全部、大事に思った。
くやしくって涙が出た。

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