「叶わなかったことを全部やってあげるね」
取り替え人形は言った。
取り替え人形は抜け目がない。
こうであってほしかったけれど、叶わなかったこと、というのをめざとく拾って、やるのだった。
取り替え人形は思っていた。
人間は安心して違っていかなければならない。
選んでしまったことに対して、安心して進めるように、
選べなかったことを自分が引き受けてあげられたら。
取り替え人形は知っていた。
誰かの替わりにはなれない。
人が望む誰かがそうしてくれる必要があったのであって、
自分がしたところで、感謝はされないということを。
だけど取り替え人形は思うのだった。
「ほんとうにそうかな?」
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