Thursday 23 July 2009

Translucency

雨でむずかしかった日食。
最大日食の直前、
黒い雲がぐんぐん動いて、みんな去っていった。
青い空と白くて軽い綿みたいな雲の世界が広がった。
青がそのままどんどん暗くなっていった。
爪の先でなぞれるかどうかの細い細い三日月の光。
このまま、宇宙とつながるということではないだろうか。
光はドアを閉じるようにどんどんどんどん細くなる。
青い空はどんどん透けていって宇宙の色になる。
森はどんどん灰色になる。
幹、枯れ葉、椿の実、蜥蜴の体の水滴と艶。
雨に濡れて、このまま世界がとまるみたいに。
雨の日の色でもない。夜の色でもない。

最後の光、漏れて、溜まって、金色の光。
目を開けていられないほどの。

最大を迎えたのか、雲が覆ったのか、
静かな時間。
その灰色の時間。
肌が少しひんやりした気がした。

森も、空も、赤かった。


約一時間、恍惚の時間。硬骨の時間。
まぶしすぎるのか、何なのか、目から涙がいっぱい出たけど
何を感じているのかも分からなかった。
肉眼で見えた、淡い水色の空の白の三日月の太陽が忘れられない。
姿を現しては消して、現しては消して。
太陽は月になっちゃった。
でも時々、まんまるの時と同じくらいの光を出して、
やっぱり自分は太陽で、まんまるであることを思い出させながら。
そういうときに日食眼鏡で見ると、
真っ黄色のとろけそうな卵の色の三日月になった。

ただただ、許容量を超えた日。
ただただ、奇跡の日。


宇宙に手が届きそうな日の、
淡い淡い空に浮かぶ真っ白な月。

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