雨でむずかしかった日食。
最大日食の直前、
黒い雲がぐんぐん動いて、みんな去っていった。
青い空と白くて軽い綿みたいな雲の世界が広がった。
青がそのままどんどん暗くなっていった。
爪の先でなぞれるかどうかの細い細い三日月の光。
このまま、宇宙とつながるということではないだろうか。
光はドアを閉じるようにどんどんどんどん細くなる。
青い空はどんどん透けていって宇宙の色になる。
森はどんどん灰色になる。
幹、枯れ葉、椿の実、蜥蜴の体の水滴と艶。
雨に濡れて、このまま世界がとまるみたいに。
雨の日の色でもない。夜の色でもない。
最後の光、漏れて、溜まって、金色の光。
目を開けていられないほどの。
最大を迎えたのか、雲が覆ったのか、
静かな時間。
その灰色の時間。
肌が少しひんやりした気がした。
森も、空も、赤かった。
約一時間、恍惚の時間。硬骨の時間。
まぶしすぎるのか、何なのか、目から涙がいっぱい出たけど
何を感じているのかも分からなかった。
肉眼で見えた、淡い水色の空の白の三日月の太陽が忘れられない。
姿を現しては消して、現しては消して。
太陽は月になっちゃった。
でも時々、まんまるの時と同じくらいの光を出して、
やっぱり自分は太陽で、まんまるであることを思い出させながら。
そういうときに日食眼鏡で見ると、
真っ黄色のとろけそうな卵の色の三日月になった。
ただただ、許容量を超えた日。
ただただ、奇跡の日。
宇宙に手が届きそうな日の、
淡い淡い空に浮かぶ真っ白な月。
Thursday, 23 July 2009
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