小野雪見御幸絵巻を見た。
乱暴きわまりない言い方をしてしまうと、
大好きな男の人が、雪の日に自分のところへ通ってくることがわかって、
おもてなしをする絵。
真っ白な雪の庭に、彼が車でつく。
女の人は、それを想像して、
御簾の下から、真っ赤な袴の、女の人の足下がたくさん並んで見えたら、きれいなんじゃないかと思う。
女の人をたくさん並べてみる。それでも、まだ足りないような気がして、
袴を半分に破って、二倍にかさ増しして、並べてみる。
その光景は、ほんとうにきれいだった。
私は、車で到着したばかりの男の人になって、その光景を見たようだった。
それに、私だったら、大好きな人には、できるなら他の人のところへ行って欲しくない。
いくら足下だけだって、他の女の人をたくさん並べたりしない。
女の人をそんなに並べて、もてなして、それはもうなんていうか、
心意気があっぱれ、っていうか、想像を超えている。
もちろん、いやらしさなんてなんにもない。
その光景が、美しいってことが全てだった。
ふかふかの雪の庭に、真っ赤な足下。
目の前に、最も美しい光景を用意して、待っている。
それって、なんだか、大好きな人に映画を見せてあげるような感じというか。
大好きな人にみせてあげたい光景。
それがフィクション。
なんだか、ものすごいものを見てしまったと思った。
(東京芸大美術館所蔵。このサイトより拝借) |